アポロ計画<サターンロケット>

 <43年前に”月に3人を運んだアポロ宇宙船”を打ち上げるのに使用した史上最大のロケット” サターンV、サターンロケット ”>



製造>ボーイング社、ノースアメリカン社、ダグラス社、グラマン社、IBM、MITその他。 部品数 300万個以上

設計&とりまとめ>Wernher Magnus Maximilian Freiherr von Braun (ヴェルナー・フォン・ブラウン)


8-1●サターンVロケット 、サターンロケットは、2000トンの燃料を2分半で消費(1秒間に20トン、小型原爆なみのエネルギーを内蔵)し、打ち上げ後11分でほとんどの部分が廃棄される>

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 1960年代、アポロ計画は旧ソ連に対する科学技術の優位性を1960年代、アポロ計画は旧ソ連に対する科学技術の優位性を示すためにアメリカ国家の最優先事項として計画され、企業2万社、延べ300万人が10年、当時のお金にして300億ドル(今にすると日本では20兆円ぐらい)で取り組んだ。スペース・シャトルが地上100kmぐらいを周回する(打ち上げて約9分で打ち上げ完了)のに対して、アポロ宇宙船は、43年前に月まで片道3日かけて38万kmを宇宙空間を単独航行し、帰ってきた。(スペース・シャトル:アポロ=100km:380000km→ 3800倍の距離)。

 アポロ宇宙船の打ち上げに使用されたロケット「サターンV(ファイブ)、サターンロケット」は、全長110m(30階建てビルに相当、部品100万個)、燃料込みの総重量3000トンで、打ち上げ総重量の93%が燃料で占められる。トータルで20機ほど製作され(費用総額70億ドル=今の日本の感覚では25兆円、1機1.25兆円)、25万人の技術者と、約2000の企業が関わり”当時の技術で可能な限り小さく作った”とされ、最下部の第1段ロケット部分は、燃料のケロシン(成分は灯油とほぼ同じだが、高高度の低温で水が凍結しないように灯油から水分を徹底的に抜いたもの)、液化酸素合わせて2000トンを2分30秒(当時の原爆の10分の1のエネルギー、1億6000万馬力、毎秒15トン、自動車50万台以上、ジェット戦闘機543機の推力)で消費した。第1段ロケット部分は、街で見かけるタンクローリー(1.6万L)48台分のケロシン、75台分の液化酸素を搭載し、2秒間の燃焼でタンクローリー1台分のケロシンを消費(一秒に灯油8000L、18Lのポリタンクにして、一秒間に444個、その他に超低温で高価な液化酸素も大量に消費)した。

 ロケット上部の”銀色以上の部分がアポロ宇宙船”で、すぐ下の三角錐部分に月着陸船を収納している。月着陸船を収納している部分は、外側の薄い覆い(宇宙船・月着陸船アダプター、上部直径4m、厚さ45mm(DVDケース三枚分)のハニカム構造)で重さ30トンの宇宙船を支えている。 48トンのアポロ宇宙船+月着陸船を月軌道に運ぶためには、打ち上げ時には3038トンのロケットが必要で、第一段ロケットの燃料は2056トン、第二段ロケットは485トン、第三段ロケットは26.7トンの燃料を使用し、ロケット本体の重量は470トンに対して燃料は約5倍の2568トンが必要である。サターンロケットのロケット本体(正確にはアポロ打ち上げ乗り物、アポロ・ラウンチ・ビークル)の黒い部分は、ケロシンや液体水素などの燃料が入っており、白い部分は酸素のない宇宙空間で燃料を燃焼するための液体酸素などの酸化剤が入っており、白黒の交互模様は、燃料と酸化剤が混合する部分を表現している。

 地球に帰還するのは銀色部分の上にある三角形部分(アポロ指令船)だけで、この形が”アポロチョコ”の原形になった。左図の下部に見えるのは大型ヘリであり、ロケットの巨大さがよく分かる。打ち上げ時のロケットには窓がないので、宇宙飛行士は地球を出るまで外の風景を見ることはなく、打ち上げ直後の重力加速度は1.1Gと快適で、宇宙船内部は意外に静か(宇宙船には音も振動も伝わらなかったという)で、飛行士たちは計器が作動を始めて打ち上げに気付いたという。

 この時代(40年前)のコンピュータは初代ファミコン以下の計算能力であったのは有名な話。月面が熱くない夜に上陸することを目標にして、当時700台近くのコンピュータを使用して月までの軌道を計算して(地球も、月も、太陽も動いているので、実際にはメリーゴーランド上でキャッチボールするような状態になり、そのための計算)から打ち上げた。5つある第一段ロケットのエンジンの一機でも、故障すれば離陸は不可能であり、そういう時の脱出に備えて、アポロ宇宙船の上部に、脱出用ロケット(一番上の筒状の部分)が装備されている。また、燃料充填係は、志願制で打ち上げ時は地下に設置された地下壕に避難していた。

 ロケットが膨大な燃料を消費して、わざわざ真上に離陸するのは大気層(100km、時速100kmの車で行くと1時間)を最短で通過するためであり、まずは真上に上昇し、空気が薄くなったところで徐々に水平方向に姿勢を変化してスピードアップを図り、地球周回速度に達するようにしている。ただし実際には、大気が濃い所で、スピードが速くなるとロケットにかかる空気圧が最大になるポイント(MaxQ)があり、ここで一度スピードの増加率を下げて、大気が薄い高度まで上昇した後に、さらにスピードを増加させている。 

 「サターン(土星)」という名前は、以前に使用していたロケットが「ジュピターC(木星)」だったので、順番からいくと次は「土星(サターン)だろう」という経緯で決まった。

 最新のロケットは外板の厚さは、1.6mmで、これをハニカム構造にすることによって強度を保っている。ロケットの直径4mに対して板の厚さが1.6mmなので、割合でいうと1万分の4しかない。一方、卵は殻の厚さが0.3mmなので直径4cmに対する割合は1万分の75なので、「卵の殻は最新ロケットの20倍も厚い」ということになり、これぐらい薄くなると、タンク内部にガスを注入しないと変形してロケットを立てることも出来ない。

 ボールを投げる事を考えた場合、速く投げるほど遠くに落ちる。これをどんどん速くすると、理論的には地球を一周して元の投げた位置に戻ってくる。これが人工衛星の理論で、実際には、時速28000kmで飛行すると、地球の重力と遠心力がつりあって、空気抵抗を無視すると半永久に地上に落下しないことになる。ちなみに、これはアイザック・ニュートンが考えていたことで、著作にも記述している。時速28000km以上のスピードを出すと、地球重力から少しづつ解放され、軌道はだ円を描くようになり、時速40000kmになると月軌道まで到達することが出来るようになる。よって、人間+アポロ宇宙船+月着陸船という大きな重量物を時速40000kmまで加速するのに必要なロケットを地球軌道に乗せるために、逆算していくとサターンロケットのような巨大なロケットが必要になった。


<第1段ロケット S-IC  燃料=液化酸素+ケロシン>

製造>ボーイング社  製造数>19台


~地上から大空へ~

 打ち上げから、2分42秒燃焼し、マッハ8、高度70kmまでの加速を担当。直径、約10m、全長42m、上部タンクには約1400トンの液化酸素、下部タンクには約630トンのケロシンが入っており、下部のF-1エンジン5基に燃料を送り込む。液体酸素は、可燃物に触れると発火する可能性があるので、液体酸素の充填前には、タンク、配管などを、手の脂さえ残らないように徹底的に洗浄していた。第1段ロケットに5つ装備されているF-1エンジンは、一基でスペース・シャトルのメイン・エンジン3基以上の推力(1秒で3トンの燃料を消費)を発生し、5基のエンジンは、スペースシャトル5機以上の出力、1億6000万馬力を発生し、小学校の25mプールの水を30秒で空にするほどの冷蔵庫よりも大きいポンプを搭載している。燃料を送る弁は樽の蓋ぐらいあり、燃料パイプは人が入れるぐらいに大きい。打ち上げ時には2200トンの重量であるが、燃料を除く本体は、約137トン(打ち上げ時の重量の6.2%)しかない。第1段目ロケットの胴体は歴史上最大の直径を有するアルミニウム製。

 発射8.9秒前に、5つあるうちの、中央エンジンが点火され、続いて周囲の向かい合わせになるエンジンが、機体にかかる負荷を抑えるために0.3秒の間隔をおいて点火される。発射2秒前にエンジンが全開になり、機体に搭載されたコンピューターが異常がないことを確認すると、ロケットと塔をつないでいたアームが切り離される。続いて第一段ロケットを発射台に固定していたピンが外され、機体はすみやかに離陸を開始する。この際、轟音と炎による発射台の損傷を防ぐために毎秒2.8万ガロンの水が炎に向けて噴射される。いったん離陸してしまえば、エンジンが停止するような事態が発生したとしても、ロケットを発射台に戻す方法はない。

 ロケットが完全に塔から離れるまでには、約12秒かかる。その間、強風が吹いて塔と接触したりすることのないよう、機体は塔と反対の方向に1.25度傾けられる。高度130mに達すると、機体は方位角を合わせるためにローリングを開始し、第二段ロケットの点火38秒前まで、徐々に角度を傾けていく。このプログラムは、発射が行われる季節の風向きによっても異なってくる。周囲の4基のエンジンは、仮にどれかが故障して燃焼を停止しても推力線が重心を外れることのないよう、わずかに外側に傾けられている。飛行の初期段階はもっぱら高度を得ることに費やされ、速度を得るのは後半部分になる。

 第一段ロケットは150秒の燃焼で2,000トンの燃料を消費し、機体を高度130mまで上昇させた後、飛行制御で傾きはじめ、高度68km、マッハ8にまで到達させる。高度68kmで分離した第1段ロケットは、惰性によって高度110kmまで上昇したあと、ケネディ宇宙センターから560km離れた大西洋上に落下する。

 サターンロケットを打ち上げる瞬間は、排気が約45キログラムの破片を5キロメートル先に飛ばすパワーがあり、また、確実にロケットが宇宙へ安全に飛び立つ可能性があるわけではなく、空中爆発の可能性もあったので、ロケット発射場から5.5キロメートル離れた場所に、招待者用の見物席が設けられた。実際、初期のサターン5ロケットは莫大な振動を発生し、打ち上げ上から5km離れた録音スタジオ内の天井タイルが振動で何枚も剥がれたという。初期のサターン5ロケットは、振動が大きすぎて「アポロ6号」ミッションでは5台あるロケットエンジンのうち2台が予定よりも早く停止するというアクシデントがあり、改良のために、その後のアポロ7&8号では、小型のサターン1Bロケットが使用された。 

 F-1ロケットエンジンの開発初期においては、燃焼状態が不安定という問題があり、燃焼プレートの表面を特殊な形状の「銅製しきり」で区切ることによって問題を解決した。実際にサターンロケットに載った宇宙飛行士の話によると、サターンロケットは巨大なために、司令船から100m下(ビルでいうと32階下)で轟音が鳴っていても、宇宙船は密封されているので遠く聞こえ、リフトオフ時(打ち上げ時)は、きずかないぐらいスムーズだったという。また、スピードが増加してマッハ1を過ぎると、ロケット噴射音は前進方向には届かなくなる (&高空で空気が薄くなる=音の伝わる媒体が無くなる)ので、意外に静かだという。


<緊急脱出システム LES分離>

 燃料には液第2段ロケットが燃焼をはじめて35秒後に、高度96kmで安全が確認されれば緊急脱出システムが分離されて、この時点(打ち上げから3分17秒後)で宇宙飛行士は、はじめて外の風景が見られる。緊急脱出システム自体が一種のミニロケットであり、発射台上でトラブルが発生した場合、システムが月司令船を抱えて打ちあがり、安全に月司令船を脱出させるようになっている。サターンロケット準備中に避難する場合は、飛行士達が月司令船から出て、ロープウエー風のカゴに乗ってコンクリート製の避難豪に避難する仕組みで、この風景は映画「メンインブラック3」の後半で見られる。

 打ち上げ開始中に避難する場合は、LESを使用して、司令船だけ軽く飛び上がってロケット本体から分離して海上や陸上にハードランディングするようなっていたが、これは飛行士達がケガする可能性が大きかった。また、ロケット打ち上げ場から900メートル離れた場所では、飛行士達を助けるために装甲車が準備していた。


<第2段ロケット S-II  燃料=液化酸素+液化水素>

製造>ノースアメリカン社  製造数>19台

~大気圏から宇宙へ~ 

 燃料には液化水素と液化酸素を使用し、打ち上げ直前まで、気化して損なわれる液化水素を充填している。打ち上げから、第一段ロケットの分離後、5基のJ-2エンジンが360秒燃焼して、アポロ宇宙船を高度184km、秒速7kmまで加速させた後、発射点から4200km離れた大西洋上に落下する。第2段ロケットの開発過程においては、液体燃料をフロリダの暑さから守るための断熱技術が問題となり、タンクの周囲にハニカム断熱材を接着していたが、うまく貼れないという問題があり、当時、カリフォルニアの工場の近くのサーファー達が、サーフボードにハニカム材料を使用することに長けていたので、サーファー達を雇用してロケットの製造にあたった。しかし、良い波が来るとサーファー工員たちは、サーフィンに出かけてしまうという問題があった。


<第3段ロケット S-IVB  燃料=液化酸素+液化水素

製造>ダグラス・エアクラフト社  製造数>32台

~地球から月へ~

 第2段ロケットと同じJ-2エンジンが一基ついており、最初の165秒の噴射でアポロ宇宙船を地球周回軌道速度まで加速後、その後、335秒の噴射で地球の重力圏脱出速度である秒速11.2km(時速39000km)までアポロ宇宙船を加速する。その後、分離して太陽を回る軌道に投入される。サターンロケットの建造にあたっては、軽量化するためにリベットではなく溶接が用いられたが、巨大かつ薄い金属板を信頼性高く溶接するために、新しい溶接方法を開発する必要があった。アポロ13から17号では、第3段ロケットS-IVBを月面に衝突させ、事前に月面に設置した地震計で観測することによって月の内部構造を調べた。