世界の天然石、貴石、原石を楽しむ

世界の天然石、貴石、原石を楽しむ

楠本慶二 著  (更新停止 永久掲載)


< 目次 >----------------------------------

1 ルビー( Ruby )、鋼玉( コランダム、Corundum ) 

2 サファイア、サファイヤ( Sapphire )、鋼玉( コランダム、Corundum )

3 ダイヤモンド、ダイヤモンド ( Diamond、金剛石 )

4 エメラルド( Emerald )

5 ガーネット( Garnet、ザクロ石)

6 トルコ石( Turquoise、ターコイズ)

7 サンゴ(珊瑚、コーラル)

8 トパーズ( Topaz )

9 真珠、パール( Pearl )

10 ラピス・ラズリ( Lapis lazuli )、ラピスラズリ原石

11 アレキサンドライト( Alexandrite )、アレキサンドライト原石

12 オパール( Opal、蛋白石)、ボルダー・オパール、ファイヤー・オパール、ブラック・オパール、メキシコ・オパール等

13 ヒスイ、翡翠、ひすい( Jade )、ヒスイ原石、ひすい原石

14 水晶(Quartz)、アメジスト、アメシスト(Amethyst)、アメトリン、シトリン(Citrine)、メノウ(Agate)、ジャスパー

15 琥珀、コハク、こはく、アンバー(コハクになる途中の物は、コパル、コーパルという)

16 モルダバイト、リベリアン・デザート・ガラス、 リビアンガラス、シリカガラス(ツタンカーメンのガラス)

17 虎目石、タイガーズ・アイ、タイガーアイ 、タイガーアイ原石

18 月の石、月由来の隕石、玄武岩

19 その他 、砂岩 、タンザナイト、石膏、アラバスター、レインボーヘマタイト

20 お勧めの参考文献

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1. ルビー( Ruby )、鋼玉( コランダム、Corundum ) 

 無色のアルミナ(Al2O3) の単結晶に、クロム(Cr)や鉄(Fe)が微量に固溶して赤く見えるものをルビーと呼び、簡単にいうと「赤いサファイア」ということも出来て、赤以外をサファイアと呼んでいる。内部に針状のチタニア(酸化チタニウム、TiO2)が析出したものは、直交した三本の光の筋が見えることから、スター・ルビー(当然、スターサファイアもある)と呼ばれる。

 ルビーは自然界ではアルミナと鉄やクロムを含んだ岩石が地中の高温高圧化下でドロドロになり、再結晶化する過程で生成し、六角柱の形状で産出する。特に、鳩の血の色(正確にはピジョン・ブラッド)をしたルビーが一般には高価とされる。

 最近は、高品質の人工ルビーが安く大量生産されており、ダイヤモンドの次に固いことから、昔から時計の軸として採用されている。こういう時計は、例えば時計の裏面に"16jwels"などと刻印されている。また、東急ハンズなどの手芸コーナーで大きな人工ルビーは1000円ぐらいで購入可能。


2. サファイア、サファイヤ( Sapphire )、鋼玉( コランダム、Corundum ) 

 無色のアルミナ(Al2O3)の単結晶に、チタン(Ti)や鉄(Fe)が微量に固溶して青く見える酸化物。針状のチタニア(酸化チタニウム、TiO2)が析出したものは、スター・サファイアと呼ばれる。 サファイアは、自然界ではアルミナと鉄を含んだ岩石が地中の高温高圧下でドロドロになり、再結晶化する過程で生成し、六角柱の形状で産出する。

 無色~黄色~青~黒、赤色まであり、赤色のものはルビーと呼ばれる。現在では、サファイア、ルビーは高品質のものが人工的に安く合成できるようになっており、東急ハンズなどで、比較的大きなものが人工ルビー、人工サファイアとして1000円程度で販売されている。

 また、最近では、1万円以上の時計ならば、サファイアガラスと称して、人工サファイアをスライスしたものが時計用ガラスとして採用されており、普通の生活において時計のガラス面にキズがつきにくくなっている。


3. ダイヤモンド、ダイヤモンド ( Diamond、金剛石 )

 イタリア語やスペイン語では、ダイヤモンドのことをディアマンテ、フランス語ではディヤマンという。名前の由来は、ギリシャ語で万物最高の硬さだから、、征服し難いという意味のa(否定辞)+damazein(征服する)に由来。

 ダイヤモンドは炭素Cがシグマ(σ)結合によって構成した鉱物。一般には、無色透明なダイヤモンドの原石の産出は少なく、不純物として窒素Nが入った黄色いダイヤモンド原石が多く産出する。昔は主要なダイヤモンド供給企業の意図によって「高価な無色透明ダイヤ」しか流通しなかったが、最近では、ダイヤ供給元の事情から黄色、青色、青紫色、ピンク色、緑色、茶色、黒色まで流通するようになっている。

 ダイヤモンドに窒素Nが不純物として混入すると黄色、ホウ素Bが混入すると青色、シグマ結合だけではなく、黒鉛で知られるパイ(π)結合も含まれていると、固溶量に応じて黒から茶色になり、当然、ダイヤモンドの強度も落ちる。

 ダイヤモンドの色の違いについては、宝石店でダイヤモンドを見比べると、キレイなもの、そんなにキレイでないものがはっきり分かる。また最近では原石に放射線を照射することによって色を変えることもあり、安い黄色の石を無色にしたり、青くすることもあるそうだ。

 天然に産出されるダイヤモンド(カット前)は、8面体が多く、地表に出てくる過程において、少し溶けるために、ダイヤモンド原石の見た目は地味であり、カットされることによってはじめて輝く(正確にはカット及び結晶内部の屈折によって入射した光を反射して戻している)。また、宝石店では、黄色系の強力なライトを当てることによって、より魅力的に見せている。

 本当かどうかは分からないが、天然ダイヤモンド、原油の原料は古代生物(恐竜、木、細菌、プランクトン)由来の炭素であるという説もある。ということは、生成してから何千万年も経っている?。地中深くで高温高圧状態で生成したダイヤモンドは、ゆっくり地表に出てくると結晶状態が変化してダイヤモンドから黒鉛に変化する。よって、天然ダイヤとして採取されたものは、昔、マグマと一緒に超音速状態で一気に地表に噴出したものとされ 、南アフリカのキンバリー鉱床などは、マグマが垂直に噴出した場所そのものがダイヤ鉱床となっている。

 ダイヤモンド自体は自然界(常温、常圧下)では安定であるために、地上に出現後は、ダイヤモンド周囲の岩は時間の経過によって風化されるのに対して、ダイヤモンドは変化せずに川に流され、昔はインドあたりの川原、海辺には、ダイヤモンドが小石のようにゴロゴロ落ちていたらしい。

 ダイヤモンドに似た物としては、キュービック・ジルコニア、ガラス、水晶などがあるが、見分け方としては、息を吹きかける(ダイヤは熱伝導率がいいので、すぐに水分がなくなる)、マジックペンで書いて書けない(ダイヤは撥水性が高い)等の方法がある。マジックペンで書く方法は宝石を汚すのでお勧めしない。 また、ダイヤモンドは光の屈折率が非常に高いので、ブリリアントカットしたダイヤにおいて、自然光が反射して人間の目に帰ってくるときには、プリズムの原理で虹が出てくるのも特徴である。

 ダイヤモンドは自然界では世界一固い物質として知られているが、炭素の塊なので、衝撃に弱く欠けやすい、熱に弱く、火事では燃えてなくなるそうで、ダイヤモンド1グラムを取り出すために約5.3トン(乗用車3-4台の重量)の岩、土を処理しているという。

 ダイヤモンドの他に、炭素が主成分の物質としては、黒鉛(人工的に作ったもの)、ジェット(木の化石?)、シュンガイト(shungite、木の化石?)、木炭(木を焼いたもの)、石炭(木の化石)があり、最近では、技術の進化によって、比較的簡単にダイヤモンドの板を作ることも可能になっている。


4. エメラルド( Emerald )

 3BeO・Al2O3・6SiO2で構成されるベリルと呼ばれる単結晶に不純物としてクロム(Cr)とバナジウム(V)が微量に固溶した結果、緑色を示しているもの。古代インド語(サンスクリット語)で「緑色の石」という意味の言葉が時代と共に変化して「エメラルド」と呼ぶようになった。

 基本的には、アクアマリンと同じベリル類に属するが、自然界では、「ベリルの主成分であるベリリウムが含まれる岩」と「クロムを多く含む岩」は別の所にあることが多いので、エメラルドが生成すること自体珍しく、 奇跡の宝石と呼ばれ、岩石中のすきまのない所で成長するので大きな結晶は得られにくく、これらがアクアマリンとの値段の差になるらしい。


5. ガーネット( Garnet、ザクロ石)

 Mg3Al2(SiO4)3に代表される組成の単結晶に鉄(Fe)やチタン(Ti)、マンガン(Mn)などの遷移金属が微量に固溶した酸化物。通常のワイン色の他に、無色から黒まであるらしい。ザクロ石と呼ばれるように、見た目に果物のザクロの実のような感じで産出される。最近、虹色のレインボーガーネットが発見されて話題になった。


6. トルコ石( Turquoise、ターコイズ)

 CuAl6(PO4)4(OH)8・5H2Oで示される酸化物。「青さ」は、銅(Cu)と不純物の鉄(Fe)の量によって変化する。最近ではプラスチックでトルコ石もどきの物があり、本物はプラスチックよりも熱伝導性が高いので、触ってヒヤッとしたら本物の可能性は高い。本当はキスしたほうが冷たい感覚が分かりやすいが、店頭ではやめた方がいい。

 ヨーロッパ十字軍の時代にトルコを通じてヨーロッパに入ってきた石であったため「トルコの石」という意味でトルコ石という名前になったとされる。トルコ石の色合いは、古代文明における権力者に愛され、古代エジプトでは、トルコ石の模造品としてやきものの上にかける青い釉薬が開発された。


7. サンゴ(珊瑚、コーラル)、山サンゴ

 サンゴは1mm成長するのに10年以上かかる種類もあるらしい。そう聞くと、大きなサンゴの置物は30cmぐらいはあるので約3000年かかって成長しているといえる。

 一般に宝石用のサンゴはさんご礁のサンゴとは異なり、深海から専用の網やマジックハンドみたいなもので掴んで取り出すそうで、赤サンゴ、紅サンゴ、桃色サンゴ(ピンクサンゴ)、白色サンゴ、黒サンゴなどがあり、 血のように濃く深い色の赤サンゴは特に高価である。また、サンゴから仏像などを作る場合は、当然、仏像よりも大きな、色の均質なサンゴが必要となるために、いいものでは数百万円で販売されている。 サンゴには、サンゴ虫がサンゴ作りを止めた「枯れ木(かれき)」と、サンゴを生成中の「生木(せいき)」があり、値段は生木が枯れ木の数倍の値段がつく。

 大昔、海中にあったサンゴが、地殻の隆起によって山の中で化石化したものもあり、これは山サンゴとして販売されている。白い浜辺の白い砂は、白いサンゴ礁を魚が長年かじって出来たサンゴ粉が堆積したものとされる。その証拠として、沖縄や、オーストラリアのグレートバリアリーフなどサンゴ礁で有名な場所の砂浜はたいてい白い。


8. トパーズ( Topaz )

 Al2(F,OH)2SiO4で構成される単結晶で黄色、ピンク、緑、青などがある。また、見る角度によって色が変わるミステリアス・トパーズというのもある。鉱石ショーに行くと1000円ぐらいでエンピツ程度の大きさの柱状の結晶が買える。


9. 真珠、パール( Pearl )

 組成的には、CaCO3・C3H18N9O11・nH2O。アコヤ貝(阿古屋貝)に代表される貝が貝内に侵入した異物を炭酸カルシウム系の分泌物で包むことによって作成される。1ミクロン程度の半透明の多層膜( 700-1500層 )によって構成されるので真珠光沢が出るとされる。

 真珠とは本来、貝が体内に侵入した異物を、分泌物で包んで無害化するために形成されるため、天然物ではめったに得られるものではなく(数千個に1個の確率)、養殖真珠が開発される100年程前までは、大変貴重であり、中国では4200年前から王様への贈り物とされた。

 ちなみに、中国清朝末期の女帝、西太后(せいたいこう、1835-1908)は「真珠で作ったショール(肩掛け、見かけはスカーフ)」をまとい、鶏卵ほどの大きさの真珠のついたネックレスをしており、美容のために真珠をすりつぶして食べていた。

 天然であるために形も不規則な物が多く、変形した真珠はバロックパールと呼ばれ、十字架の形をしたクロスパール、十字架真珠というものもある。

 しかし、養殖技術が開発されると、丸く、大きさの整った真珠が得られるようになった。

 具体的には、貝殻を丸く加工した核に「他の貝の貝ひも」を小さく切った小片を貼り付けて、アコヤ貝の生殖巣に貝を入れることによって、 移植された貝の貝ひも細胞は、「他の貝の貝細胞が侵入した」と勘違いして、他の貝細胞を閉じ込めるために真珠層を形成するそうで、核の大きさによって、採れる真珠の大きさが決まる。

 貝の種類(アコヤ貝、シロチョウ貝、クロチョウ貝、イケチョウ貝、マベ貝等)によって分泌物の組成が異なるために、白、ピンク、茶色(金色)、黒色、銀色になる。また、玉の半分が白、半分が黒色の真珠もある。さらに、アコヤ貝の白色に色付けをされた真珠も販売されている。

 貝が行う生理現象を人工的に再現したものは「貝パール」という名称で販売されている。魚でも宝石でも、普通は天然物が高いのが普通だが、真珠に限っては天然物?の淡水パールの方が圧倒的に安いというのはちょっと不思議だが、淡水パール用の貝は、比較的大きいものが多く、貝一個に数十個の核を入れることが可能であり、真珠の表面がザラザラであったり、真円の度合いが低かったりすることが、安価の原因であるらしい。

 そのほか、「真珠」もどきとしては、ガラス球に人工的に炭酸カルシウムをコーティングしたもの、プラスチック球に酸化チタンをスパッタしたものなどがある。

参考にした文献> 「現代化学」 2005年 11月号 49ページ


10. ラピス・ラズリ( Lapis lazuli )>ラピスラズリ原石

 MgAl2(PO4)2(OH)2に各種の石が混じった濃い青の石。青色はMg(マグネシウム)かAl(アルミニウム)に由来すると思われるが、正確には不明。この構造式には水酸(OH)基が入っていることから、加熱するとOHが抜けて別の化合物になることが予想され、この石は熱に弱い、強度が弱いことが予想される。一般に瑠璃(ルリ)色と呼ばれるのはこの色。「瑠璃色の地球」という歌があるぐらいなので、確かに海の色に似ている気はする。ちなみに、ツタンカーメンの黄金のマスクのマユの青色は、この石が使用されており、古代において主要な産地はアフガニスタンであったので、ツタンカーメンが生きた3500年前には、エジプトとアフガニスタンの間で交易ルートが既にあったことが分かる。また、ネメス頭巾(帽子みたいな被り物)の青は、青いガラスで作製されている。

 青一色のラピスよりも青地に金色(硫化鉄  パイライト、FeS)の入った石が一般には高価で販売される。ちなみに、イスラム教では青色は神様の色とされており、中国、明時代に中東に輸出された磁器製の皿は、青い模様がふんだんに入っていたものが珍重された。 さらに、ラピスラズリの青、パイライトの金色の他に白色も入った種類があり、これを丸く切り出すと、色合いから地球そっくりになる。

11. アレキサンドライト( Alexandrite )>アレキサンドライト原石

 BeAl2O4で構成されるクリソベリルと呼ばれる単結晶において変色効果を示す種の事。 微量に含まれるクロムの性質で太陽光下では青く見えて、蛍光灯下では赤く見えるという変わった性質を有する。名前は、アレキサンダー大王に由来する。


12. オパール( Opal、蛋白石 、タンパク石)>ボルダーオパール、ファイヤーオパール、ブラックオパール、メキシコオパール等

 100~400ミクロンの球形シリカ(SiO2)が結晶水をともなってアモルファス状に固まったもので、クロムや鉄といった着色元素による発色ではなく、光の干渉による構造色が発色の起源となっている。SiO2・nH2Oで表現され、球状シリカのランダムな配列(正確には、球状シリカの整列している領域が、ある程度ランダムになっていることによる)によって可視光の回折を起こす結果として、虹色又は赤、青、緑色の領域が見える(遊色効果)のが、代表的な特徴。

 しかし、後述するように、ブルーオパール、ファイヤー(オレンジ)オパール、ピンクオパールなど遊色効果を示さないものもオパールとして販売されている。全体が透明なものは淡い乳白色(蛋白色)でかすかに虹が見える。 タンパク(蛋白)とは、卵の卵白の事で、透明オパールの外観及び、白色オパールの外観が卵の白身、ゆで卵の白色に似ているので、卵白石=タンパク石となった。

 鉄鉱石など下地が茶色の石の上にできたオパール(例えばボルダーオパール)は虹がはっきりとみえる。また、黒い下地の上に形成されたオパールはブラックオパールと呼ばれ、非常に高価な値段で販売されている。その他、オレンジ色のオパール(ファイヤーオパール)、ピンク色のピンクオパール、青色のブルーオパールなどがある。また、アンモナイト、貝殻(シェルオパール)、恐竜!などの化石がそのままオパール化したものなどがある。

 手元の資料によるとほとんどのオパールは、恐竜がいた時期、白亜紀(約6000万年前)に形成されたといわれる。一般に販売されているオパールの95%はオーストラリア産で、ブラック・オパールについては100%オーストラリア産と言われている。また、メキシコもオパールの産地として有名であり、メキシコオパールは、各色の領域が広く、肉厚で透明な水の中に、赤、青などが浮いているような感じである。

また、オパールになりそこねた小さい卵のような、珪乳石(Menilite)というのもある。


13. ヒスイ、翡翠、ひすい( Jade )>ヒスイ原石、ひすい原石

 ヒスイ(翡翠、ひすい)には硬玉(Na-Al-Fe系ケイ酸塩:ケイ酸塩 Siの酸化物, Jadeite ジェイダイト、輝石、宝石名(本ひすい))と軟玉(Ca-Mg-Fe系ケイ酸塩、Nephrite  かくせん石、宝石名(ネフライト))があり、無色から鉄(Fe)とクロム(Cr)に由来した濃い緑~ピンク、クリーム色、黒、黄色、ピンク、緑、青などがある。

 現在、日本で一般に宝石として販売されているのは、緑系又は緑とクリーム色の混ざった硬玉がほとんどであり、軟玉は安い。ただし、中国、台湾など中華圏では、ヒスイとは言わず、玉(ぎょく)と呼ばれ、歴史的な経緯から軟玉の方が「徳」が高いと言われており、軟玉の方が高い場合もある。

 玉については安くてキレイなものは、人工的に着色していると思った方がいい。また、インド、タイ、韓国、中国などの観光地ではヒスイと称してヒスイの粉を樹脂で固めた仏像などが売られているので気をつけられたし。プラスティック製などは、一般に軽く、熱伝導性が低いので初めて触った時にヒヤっとしない。また、工業製品なので色ムラがないのも特徴であり、大きくて、色むらがなく、安いものは、プラスチック製と思ってまず間違いない。

天然物はどこかしら欠陥があるものである。

 ヒスイは、特に中国で人気があり、古代中国では玉製品(軟玉製)がよく出土する。中国の清朝以前には、白く透明感のある軟玉(ネフライト)の方が価値があるとされ、明朝皇帝の印鑑(玉璽、御璽)の一部は、真っ白な軟玉で作られている。また例外もあるが、歴代皇帝が使用していたのは選び抜いた「色ムラのない玉」で作製されている。ここら辺の事情については「ホータン 玉」のキーワードで検索されたし。

 現在、中国でヒスイ(硬玉)が人気があるのは、中国最後の王朝 清王朝末期の女帝、西太后(せいたいこう、せいたいごうではない。西太后とは通称で、正確には慈喜皇太后)がヒスイを気に入っていたことも関係しているとされる。現在の中国では、透明度が高く、緑色が濃いもの、又は、白色一色のもの、緑と白の領域がはっきりと分かれているヒスイが上等とされる。

 ちなみに、本物のヒスイは固いために、印鑑の材料として購入して、印鑑屋で彫ってもらおうとすると「固すぎるのでうちでは彫れない」と断られることもあるそう。


14. 水晶(Quartz)、 石英、クオーツ、アメジスト、アメトリン、アメシスト(Amethyst)、シトリン(Citrine)、メノウ(Agate)、ジャスパー


天然水晶の出来かた> マグマが地上に噴出して冷えて固まると溶岩になるが、その時にマグマから水分が放出され、この熱水に 微小な石英が大量に溶けており、地中の空洞部分などで水が冷える過程で、溶けていた石英が少しづつ析出して、結晶化して水晶が形成される。 その際に、水晶の各面の成長速度の違いによって、成長速度の速い軸方向(えんぴつに例えるならば、えんぴつの軸)が優先的に成長するので、軸方向に成長可能だった結晶が成長して人間の目で見えるほどに巨大化する。

 石英の宝石名を水晶と呼ぶ。水晶は、シリカ(SiO2)の結晶であり、無色(水晶)、微量の鉄(Fe)やマンガン(Mn)などによる紫の水晶(アメジスト、紫水晶)、黄色の水晶(シトリン、黄水晶)、微量のチタン(Ti)によるピンク(ローズクオーツ、ピンク水晶、紅水晶)、気泡による白(ミルキークオーツ)、微量のアルミニウムによる煙水晶(スモーキークオーツ、こげ茶から黒色)、アメジストとシトリンが混じっているアメトリン、硫黄を内包して黄色に見えるレモン水晶、また、黒水晶(モリオンとも呼ばれる)、光の干渉によって虹が見える(人工レインボー水晶、天然レインボー水晶)などがある。

 また、水晶の成長過程で酸化チタンの金色の針状結晶(コイル状結晶もある)が入っているのは針水晶、黄金針水晶、髪水晶、ヒゲ水晶と呼ばれることもある。

 アメジストの紫色については、これまでは微量のマンガンを含むためと言われていたが、最近では、水晶を構成するケイ素の一部が鉄と置換し、鉄を取り囲む酸素の1つの電子が天然放射線によって損失しているために、そこを通過する光の一部(橙~黄~緑)が吸収されて、人の目には紫に見えるという説が有力。よってアメジストは日光や蛍光灯を長時間当てると、紫外線の影響で鉄部分の構造が変わって、色あせる。

 不純物が大量に入って多結晶不透明のものは玉髄(ぎょくずい、カルセドニー)といい、玉髄の中で、きれいな縞模様を示すものがメノウ(瑪瑙)と呼ばれる。メノウで安くてすごくキレイ(緑とか青が入っているもの)なものは人工的に着色されていると思っていい。また、プラスチックなどで出来ている「メノウもどき」もある。タイ、台湾、韓国、中国などの観光地で、安く売っているキレイな緑の仏像はたいがいはプラスチック。見分け方は水晶は熱伝導性がいいので触った時( 頬(ほお)で触れるとよく分かる )に冷たい感触がするし、重たい。一方、プラスチックは熱伝導が悪いので生暖かい感じがするし、比重が軽いので見た目よりも軽く感じる。また、本物のメノウをお椀や急須の形状に加工し、熱処理して赤色(赤メノウ、紅玉髄)や緑色にしたものは高級工芸品として中国の香港、広州あたりで販売されている。 天然で酸化鉄の影響で赤く見えるものは、カーネリアンと呼び、古代エジプトのツタンカーメン王の遺品の装飾に多く使用されている。

 ヒマラヤ山頂で氷河によって結晶成長が阻害された水晶は、「ヒマラヤ水晶」といって高価に取引されている。また、通常の水晶と違い、先端が徐々に小さく尖っているという特徴がある。ヒマラヤ水晶でも、表面が曇って見えるものは、見た目が氷状なので「アイス ・クリスタル」と呼ばれる。また、既存の水晶の上部に別の水晶が生成しはじめたものは、マツタケのような形なので「マツタケ水晶」と呼ばれる。さらに、六角柱の表面に、別の小さな水晶が無数に成長した「サボテン水晶」というのや、成長方向に沿って無数の水晶が同じ方向に成長してロウソクのように見える「ローソク水晶」もある。

 米国ニューヨーク州ハーキマー地方で採れる極端に結晶の成長が抑制されたものは、見た目が「カットされたダイヤモンド」に似ているのでハーキマー・ダイヤモンドという名称で販売されている。

 水晶の結晶(柱内)に山のような物が見えるもの(実際は水晶の成長過程でついた跡)は、山水晶とか、幽霊に見立ててファントム水晶 、ゴースト・クオーツと呼ばれる。また、水晶の一部に、緑色の不純物を含む物は草のように見えるので草入り水晶、草水晶、マリモ水晶又は風景のように見えるので景色水晶、風景水晶とも呼ばれる。

 グレードの低い水晶を粉にして、人工的に再溶解させて成長させたもの(溶解水晶)は、練り物とか、練り水晶とよばれているらしい。まあ、厳密には再結晶化水晶というところでしょうか。ただし、ポイント型(水晶特有の六角形をしたものは)水晶については、練り水晶で作ると加工賃で本物よりも高くなるため、 六角形型の練り水晶ものは、まずないそう。

 天然物か、合成物かを見分けるポイントとしては、丸玉の場合は、水晶越しに、髪の毛などの細い線を見て、水晶を回してみて、2重に見える場合(ぼやけて見える)があるなら天然水晶、2重に見えないならば合成物で、天然物は、複屈折現象を示す角度があるとされる。ただし小さい、透明度が低い玉の場合は判別が困難な場合が多い。 占いに使用するような天然の水晶玉は、庭石ぐらいの巨大な天然水晶の透明な部分を切り出して作製するので、非常に高価である。

 ヒマラヤ水晶や群水晶を見れば分かるが、天然物は、表面に結晶成長にともなう階段状の模様がある。ただし、透明度を上げるためや見た目をよくするために、表面をツルツルに仕上げることはよくあるらしい。

 また、クオーツ式時計の発振子用として人工的に育成される人工水晶というのもあり、15cm程度の平たい棒状 、又は板の形で販売されていることもある。これは、水晶を特定の角度で効率よく切り出すことを前提にしているために、種結晶を用意して結晶のある特定の面が大きく成長するように作製しており、 水晶本来の形である6角形になるまえに合成を止めているので、本来の6角形の形を想像しにくいが、そのまま成長させると、6角形になるそうだ。合成水晶の成長速度は一日に0.4-0.5mmだそう で、効率良く合成しても、水晶の合成はこの程度であり、自然の水晶は、やはり何百年もかかるみたいだが、実際には生成して採掘されるまでに何十万年も経過しているだろう。

 景色水晶、ヒマラヤ水晶、まつたけ水晶はヒーリング専門店で、ハーキマーダイヤモンド、ファントム水晶は鉱物ショーで販売されていることが多い。 微小な石英が集まって出来た物はジャスパーと呼ばれ、碧玉(へきぎょく)とも表現する。微小な石英の空間に入る不純物によって、赤色、白、黄色、黒などになる。

非常に参考になる文献> 「成因・特徴・見分け方がわかる 水晶・メノウ・オパール ビジュアルガイド」 誠文堂新光社

 

15. 琥珀、コハク、こはく、アンバー(コハクになる途中の物は、コパル、コーパルという)

 コハクは太古の木の樹脂が化石化したもので約4000~6000万年前。一方、コハクになる途中の樹脂はコパル(ヤングアンバー、コーパル)と呼ばれ、100万年前の木の樹脂が化石化したもの。コパルを適当に熱処理することによって淡い緑色にしたものも販売されている。ミネラルショーなどでは「虫入りコハク」として販売されている場合が多い。また、コハクの産地によっては紫外線をあてると青い蛍光を発する種類があり、これはブルーアンバーという名称でミネラルショーで販売されている。


16. モルダバイト、リベリアン・デザート・ガラス、リベリアガラス、 リビアンガラス、シリカガラス

 モルダバイトとリベリアンデザートガラス(リベリアガラス、 リビアンガラス、シリカガラス)は、昔、隕石が地球に衝突した際に発生した熱によって自然に形成されたガラスでテクタイトと呼ばれることもある。

モルダバイトはヨーロッパのモルダウ川付近で採れる緑色のガラス。

 一方、リベリアンデザートガラスはその名の通り、アフリカ大陸のリベリアのサハラ砂漠でとれるレモン色のガラスで、別名「ツタンカーメンのガラス」と呼ばれる。これはNHK特集という番組で、「ツタンカーメンのペンダントに使用された」から名づけられ、乱獲を防ぐために現在では入手がとても困難な状況にある。しかし、最近はどういうわけか、東急ハンズなどで比較的大きなものが安価で販売されている。興味がある人は「ツタンカーメン ガラス」で検索してみてください。

 また、南西アジア、オーストラリアあたりでとれるテクタイトとしては、インドシナイト、ダーウィングラスと呼ばれるものがあり見た目は深緑から黒色で、見た目は黒曜石(こくようせき)に似ている。黒曜石は火山付近で取れる天然ガラスの一種で、黒色が有名であるが、水色~緑~黒色まである。

 モルダバイトもリベリアンデザートグラスも、シリカガラスと呼んでいいもので、酸化ケイ素(シリカ、SiO2)が非晶質(ガラス化)した状態であり、シリカは1800℃以上でないと溶融しないので、地上で1800℃以上になる状態、及び、近くの隕石の衝突跡から、隕石衝突由来の鉱物と考えられている。ちなみに、原爆被爆地でもこのようなガラスが生成することが知られている。

 シリカを原料とした石英ガラスは、耐熱性、透明性がとてもいいので、アポロ宇宙船、スペースシャトルの窓に使用されており、石英ガラスをファイバー化して作製した断熱タイルはスペースシャトルのフロントガラス周辺、及び黒いタイル部分に大量に使用されている。


17. 虎目石、タイガーズ・アイ、タイガーアイ>タイガーアイ原石

 石英のなかに石綿(アスベスト、アスベスト といっても発ガン性の高いものから低いものまで様々ある)由来の繊維状組織が入っており、模様が虎の目に見えるから、タイガーズアイ(タイガーアイ)。ちなみに、虎目石(黄色)とジャスパー(茶色)とヘマタイト(黒)が層状になったタイガーアイアンという石がオーストラリアで産出する。


18. 月の石>月の石、月由来の隕石、玄武岩、エクロジャイト

 月が白く見えるのは、「レゴリス」と呼ばれる隕石や溶岩の噴火によって溶けた直径10ミクロン~1mmのガラスや砂が、強烈な太陽光線を反射しているからであり、月には大気がほとんどなく、風も水の流れもないために風化せず、これらの微細な粉末の形状は尖っていて危険であり、服につくとなかなかとれない。月の黒い部分は、月が形成された時にマグマが噴出して固まった黒っぽい玄武岩であることが分かっている。

 玄武岩は、地球内部のマグマが冷えて出来たもので、 海底の岩盤は、基本的には玄武岩。マグマは、上部マントル相を構成しているカンラン石 (宝石名 ペリドット)が溶けて出来ると考えられており、実際、カンラン石が溶けつつある玄武岩が一般に販売されている。

 玄武岩が地中で長い時間かかって 変質したものがエクロジャイトと呼ばれ、玄武岩が分解したものが、花崗岩(かこうがん)で、白い石英及び長石、黒い雲母(うんも)から構成されて、酸化鉄の含有量に応じて白~赤~黒の花崗岩となる。 花崗岩が、地上で長い時間、風化すると、石英、長石、雲母などの砂になる。さらに、細かい砂と、植物由来の有機物がまじりあうと、いわゆる”土”になる。5000年前に建設されたとされるイギリスのストーンヘンジの一部にも粗粒玄武岩が使用されており、これは産地のプレセリーの名前からプレセリブルーストーンと呼ばれている。

 月の石関係としては、アメリカの有人宇宙探査計画>アポロ計画で人間が片道3日かかって月まで命がけで行って採取してきた「月の石」、月に隕石が落ちた際に弾き飛ばされた大量の岩石が長い時間(数千万年)、地球の軌道上を漂った後に、地球に落下した「月由来の隕石(月起源隕石)」(これと同じ理屈で「火星の石 (火星起源隕石)」というのもある)、月の石と基本的には同じ成分の玄武岩がある。


19. その他>砂岩

 砂岩>  文字通り、海底や地上の砂が自然に固まったもので、化石などは砂岩によって包まれているので、簡単に掘り出すことが出来る。

 バナジン鉛鉱> 産地によっては鮮やかなオレンジ色の6角形の結晶が生成する。

 クロム雲母> 緑色のクロムを含む雲母をクロム雲母と呼び、石英が染み込んで硬くなったものをアベンチュリンと呼ぶ。

 桃簾石(とうれんせき、チューライト)>ゾイサイト(灰簾石(かいれんせき))の変種で、マンガンを含んできれいなピンク色になったものを桃簾石、チューライトとよび、バナジウムを含んで淡い紫色になったものをタンザナイトと呼ぶ。

 透明石膏(せっこう)> 石膏は結晶水を含む硫酸カルシウム(CaSO4・nH2O)で、産地によっては、大型で非常に透明な結晶が得られる。適度に吸水性があり、柔らかいので、焼き物の鋳込み成型用の素材や、彫刻の基本型作成などにも使用され、耐熱性を生かして石膏ボードとしても使用される。石膏全般をGypsum、透明石膏をSelenite、細かい粒で構成される石膏をアラバスターと呼ぶ。

 レインボーヘマタイト> ヘマタイトの一種で、表面の酸化状態によって、虹色に輝く。ブラジル産の天然物。 


20. お勧めの参考文献

●「色や形の不思議、でき方のメカニズムがよく分かる 鉱物・岩石入門」 誠文堂新光社

●「学研の図鑑 美しい鉱物」 学研

●「鉱物結晶図鑑」 東海大学出版会

 >教科書では、結晶は4面体、6面体~に成長すると掲載されているが、実際の鉱物では理想的な4面体~になって産出されるものはほとんどなく、実際は多数の面が出ている。この疑問を図で解消できるのが、この本。定価3000円と多少高いが、鉱物好きには、それだけ払う価値はある。

4●「成因・特徴・見分け方がわかる 水晶・メノウ・オパール ビジュアルガイド」 誠文堂新光社

                         以上。